로그인俺はスノール前線基地を離れ、ペガサスにて王都クリステラへと戻っていた。 自室のバルコニーにプテラを降ろし、秘密裏に侵入。兄上に見つかるよりも早く父上と面会しなければならない。 幸いにもバルコニーの扉は開かれていた。メイドが換気でもしてくれていたのだろう。「さっさと用事を済ませて帰んないと、五百人しかいないからな……」 魔国の進軍ではなくとも、強大な魔物が現れる可能性だってある。俺はいち早く父上に要件を告げて、スノールへとトンボ返りしなくてはならない。 静かに部屋を出て、王城を彷徨く。この時間だと父上は自身の執務室にいるはずだ。 ノックをして応答を待つ。すると直ぐに執事であるセバスチャンが開いてくれた。「ルル、ルカ様でしょうか!?」 んん? 何を驚いているんだ? 俺は俺だろう? 百人も王子殿下がいるってこともないというのに。「通せ。父上に話がある……」「しょ、承知しました」 驚きを隠せぬセバスチャンに俺は眉を顰めている。新人ならばともかく、セバスチャンは何十年と王家に仕える執事なのだから。 まあそれで通された先。執務中だった父上はどうしてか俺を見てペンを落とした。「ル、ルカなのか……?」 えっと、どんな三文芝居なんだ? 城を出てから何年も戻っていないなら分かるけれど、俺はそこまで長く留守にした覚えはないっての。「どう見ても第二王子でしょう? 何か問題でも? ペガサスを手に入れたので前線からいち早く戻ってきたのですが」「いや、お前は亡くなったと報告が上がっているぞ!?」 あれ? 俺って既に死人認定されてんの? 騎士学校へ入ったのは全員が知っているはずなのに。「どうして、そのような話に?」「いや、アークライトが魔道通話にて知らせてきたのだ。功を焦ったルカが独断で前線基地に乗り込んで来たと。しかも、間が悪いことに魔国の侵攻に遭ってしまったのだと……」 ああ、兄上は侵攻時期を分かっていたってことか。斥候の情報を精査して、俺を呼び出したってわけだな。 幾ばくもなく攻め入られる。尚且つ、兵は五百しか残していない。勝てるはずもないのだから、死んだことにしたってわけか。 スノールの敗走兵が余計な話をする前に、俺の独断であったことを予め伝えておくことにしたらしい。「父上、その話は根本から間違っております。俺は騎士学校にいた
「やっぱ俺は女神に愛されてるな!」 声を張ると、気分がスカッとする。アークライトに嵌められたと知ったときとは比べものにならない。 周囲は一層暗くなっていた。 恐らくもう夕暮前だろう。しかし、魔国の雑兵であるゴブリンたちは極端に数を減らしており、次第に向かって来る気力を失っている感じだ。「てめぇら、来ないのか?」 大剣を肩に乗せて聞いてみる。通じているのか分からなかったけれど、ゴブリンたちは遠巻きに俺を見ているだけだった。 圧勝確定。俺がそう思った矢先のこと。「うふふ! あらやだ……。兵が少ないかと思えば、強者を配置していたのですね? 困りますわぁん。この雑魚共は魔王様より預かったものですのに……」 戦闘が始まってから俺は初めて声を聞く。 それは確実に魔将軍だ。この雨の原因である水竜魔リヴァイアに他ならない。「よう、火照る身体を冷やしてくれて助かるぜ……」「貴方、お名前は? ワタシは六魔将が一人リヴァイアですのよ。尊い強さをお持ちでキュンキュンしちゃいますわぁん。思わず惚れてしまいそうですわ、ぐふふふ……」 リヴァイアは俺を格下と見ているのか竜化していない。また完全な男にしか見えないが、お姉言葉を操っている。「男に好かれても嬉しくない。それに女も間に合っている」「いやぁぁん! でも確かに強者は独り占めできますわねぇ? ワタシも強者でありますから、貴方を手に入れようと思いますわ。手足をもいで、その身体を食らい尽くしたい。骨の一本までしゃぶりつくしたいですわん!」「気持ち悪いこと言ってんじゃねぇよ? 戦うんだろ?」 会話しながら、俺は戦いの準備を始める。 まずはマルシェの加護である一騎当千の鼓舞を勇者に使う。加護についてはジョブチェンジの必要がない。よって、あとは烈火無双を使用するだけだ。「あふーん、勇ましき貴方に慈悲を。ワタシはこのまま戦ってあげますわ。竜化をして爪の先すら消し去っては楽しめませんもの。ぐふふふふぅ……」「言ってろ……。こねぇなら俺からいくぞ!!」 大洪水を起こされては厄介だ。油断している間に動けなくしてやるよ。 俺は大剣を握り締め、リヴァイアを斬り裂いてやろうと駆け出している。「烈火無双ォォオオオ!!」 瞬時に大剣が炎を帯びた。 明らかに属性的不利はあったけれど、使わないよりは絶対にマシだろう
「全て叩き斬るだけだが?」「いや、あの影であれば二万以上おります! 砦に入ってください!」「必要ない。俺を信じられないのであれば、早々にスノールを発て。二万だろうが五万だろうが俺の敵ではない!」 正直にキツいけどな。もう、ここまで来たらやるしかない。 幸いにも俺は回復魔法まで持っている。三つのジョブを切り替えながら戦えば、何とかなるはずだ。「走れ! 等間隔で弓を射る準備だ! 砦の扉は閉じておけよ? 少しの心配も必要ない!」 俺の声に兵たちが戸惑いながらも走って行く。元より彼らではどうしようもない。無駄に兵を失うよりも、俺が最前線にて戦うだけだぜ。 降りしきる雨の中、魔国の軍勢がその姿を露わにしていく。 急な雨の原因。それはきっとリヴァイアのせいだ。ゲームでもリヴァイアが現れた折には雨のエフェクトが入っていた。 兵には伝えなかったけれど、まず確実にリヴァイアが侵攻軍の指揮を執っていることだろう。「やっぱ雑兵はゴブリンだけか」 できる限り魔法は温存したい。 ゴブリンは純粋な剣術だけで倒すべきだ。予想通りにリヴァイアがそこにいるのならば。「かかってこい!」 相対するや、俺は斬りかかっていく。不思議と漲る力を全開にして。「うおぉおおおっ!!」 どうしてか大剣が軽い。サンクティア侯爵家で振ったときよりも随分と。 水平に振った俺の剣は、ゴブリン共を一度に十体くらいは斬り裂いていたことだろう。 流石は剣聖が使ったという業物。斬った感触すらなく、まるで綿雲でも斬っているかのようだった。「いける!」 俺は大剣を振り続けた。 一振り十体という計算なら、二千回振ればゲームクリア。そこまで上手くは運ばないだろうけど、終わりが見えるってのはありがたい。「雑魚が群がるんじゃねぇ!」 何度も剣を振る。今のところは何の問題もない。 片手で振り切れるのだ。これなら本当に俺は、この危機を乗り越えられるのかもしれない。「クソッ!」 不意に鉄矢が俺の腕をかすめる。どうやらゴブリン共は遠距離攻撃も用意しているらしい。「ブレイブシールド!」 魔力は温存したいところだけど仕方がない。延々と鉄矢を射られてしまえば、流石に俺の体力が先に尽きてしまう。「チッ……、毒矢かよ。浄化!」 ご丁寧に毒が塗ってあったようだ。しかし、俺は瞬時に神職者へとジ
竜殺しという大剣を受け取った俺はスノール前線基地へと到着していた。 陣中見舞いとして、大量の物資を運び込んでくれることも侯爵様は約束してくれている。「ルカ殿下!」 砦にペガサスを降ろすと、兵士たちが近寄って来た。 割と数が少ないのは、大半が最前線に配備されているからだろうな。ここには二万を超す兵が配備されているはずであり、中途半端な時間に到着してしまった俺に責任がある。「ああ、ご苦労だった。これからは俺が前線基地の指揮を執る。よろしくな?」 俺が労いの声をかけるも、兵は浮かない表情だ。何か問題でも抱えているのかもしれない。「どうした? 兄上が何か問題になるようなことでもしたか?」 俺の問いに兵はバツの悪そうな表情をしながら質問に答え出す。驚愕を通り越して、呆れてしまうその理由を。「私は副官のリーズベルです。ルカ殿下がお見えになることは分かっていたのですが、出迎えの人数を割けない事態でして……」「んん? 魔国の侵攻でもあったか?」 重ねた問いには首を振られている。 どうにも理解できん。魔国が南下を始めたわけではないのなら、前線基地に問題などないはずだ。「実はアークライト殿下が大半の兵を引き上げてしまわれたのです。今ここに配備された兵は五百人しかおりません……」 俺は絶句していた。 聞けばアークライトは自身が撤収する際に、二万五千という兵を王都へと連れて行ったという。よって、スノールは前線基地と呼べないほどの兵力しか残っていないらしい。 嘆息するしかない。ここまでするのかと。女神たちが生み出したイレギュラーは、この世界線に多大な不利益を被っているようだ。「どうしようもないクソ野郎だな……」 俺の独り言にリーズベルは視線を泳がす。 流石に第一王子の悪口に同意はできないみたいだ。「それでバリウス帝国の現状はどうなっている?」「詳細は分かりません。一ヶ月前に五千という援軍を送ったのですが、一週間前から連絡が途絶えています」 練度の低い兵を幾ら送ろうとも無駄なことだ。 魔将軍リヴァイアは広域スキルにて大洪水を引き起こす。場合によっては、一瞬にして五千の兵など輪廻に還ることだろう。「リーズベル、兵を集めてくれ。今後の方針を話したいと思う」「承知しました……」 どうあっても俺を排除するつもりらしい。 アークライトはシリ
私兵に案内され、俺はサンクティア侯爵の執務室へと来ていた。 忙しいところ、誠に申し訳なく思う。まあでも、リィナが会っておけというのだから、俺は彼女が話す通りにするだけだ。「ああ、殿下! 兵たちが失礼しました。経緯についてはリィナからの魔道通話で聞いております」 いや、失礼なのはメイドのババアなんだかな。まあ、別に構わないけれど。 それでリィナは早速と連絡を取ってくれたらしい。 経緯ってのはどこまで話したのだろう。まさか俺との関係まで赤裸々に伝えたなんてことはないと思うけれど。「殿下には感謝しかありません。まさか幾ばくも生きられないリィナの願望を叶えてくださるなんて……」 うん、全部話したみたいだな。黙っているとも思えなかったし。「こちらこそ立場も考えず申し訳なく考えております。俺はどうしてもリィナが良かった。ただそれだけです」 俺の返答に侯爵は言葉を詰まらせていた。 今さらながらに知った俺の気持ち。彼が知っているのは改変された世界情報に他ならないが、俺とリィナの愛は世界線を越えても同じだ。そこに誤解など生じるはずもなかった。「良かれと思い破談にしたわけですが、私は二人の気持ちを蔑ろにしていたわけですか」「侯爵のお考えはよく分かります。了承した父上の判断でさえも……」 記憶を頼りに考えると、二人の判断は正しい。 俺は第二王子であり、リィナはもう何年も生きられないと診断された。許嫁という婚約関係を続ける意味はもうなかったのだ。「しかし殿下、リィナが逝ったあとのこともお考えください。確実にそのときが訪れます。フィオナ殿下とのご婚約はとても良いお話であったというのに」 それも分かっている。けれど、俺は葛藤しているんだ。 このまま生き続けるのか、或いは死を選ぶのかと。 死を選ぶ場合の未来。それは誰も幸せにならない無意味な決断だと分かっていた。 間違いなくリィナは喜ばないだろうし、フィオナまで不幸になってしまう。リィナの死を受け入れると、少なからず一人は幸せにできるのだから。「俺はこれから戦場へと向かわねばなりません。しかも、罠である可能性が否定できない。生き残ってからの話なんか考える余裕はありませんよ」 こう答えるしかない。悩める俺は結論をまだ出したくなかったんだ。「アークライト殿下は惨い決断をされましたな。それも全て貴方様に才
北東の街レザルを飛び立ち、俺はサンクティア侯爵邸へと向かっている。 天馬とはよく言ったもので、数日はかかると思っていた道のりをたった一日で辿り着いていた。「プテラ、ありがとう。お前がいてくれて助かったよ」 声をかけると反応してくれる。純潔の乙女が好きなのだと思ったけれど、俺は割と気に入られているのかもしれない。 ちょくちょく俺を振り返っては、様子を確認してくれるくらいだし。「まさかイリア様が俺を女の子にしようとしていたのが関係してんじゃ?」 俺は男だし、穢れてもいる。そんな俺を慕うペガサスなんて信じられない。主人であるフィオナの命令だからかもしれないけど。 考え事をしている間に、サンクティア侯爵邸が見えてきた。 本当に懐かしく思う。改ざんされた記憶にあるのは勿論のこと、俺には並行世界で訪れた記憶があったのだ。 広大な庭にペガサスを降ろすと、直ぐさま私兵たちが俺を取り囲む。「待て、俺はルカ・シエラ・シルヴェスタだ。侯爵殿に面会を頼む」 こんなとき王子殿下という肩書きは強いな。 直ぐさま兵たちは頭を垂れ、非礼を詫びてくれるのだ。明らかに庭へと降りた俺が悪いというのに。「おやまあ、誰かと思えばイケメン王子じゃないか?」 たった今、謝罪を受けたはずだよな? だというのに、揶揄するような声が聞こえている。 目の前にはメイド服を来た老婆。どうしてかニヤニヤとして俺を見ていた。「イケメン王子、リィナにズバんと決めてあげたんだろうね?」 何だか既視感があるな、この婆さん。俺は初対面であるはずなのに。「処女を焦らすなんて野暮な真似したんじゃないだろうね? 溶けたバターを舐め回すようなことしてんじゃないよ? 分かってるかい、イケメン王子!?」 ああ、なるほど。理解した。 この婆さんは、きっとアレだ。ずっと俺を悩まし続けた元凶に違いない。「あのエロババアか!?」「クック……。ワシがリィナの躾け役さね。エロババアとは褒め言葉だよ、イケメン王子」 ぶっちゃけ不敬罪で引っ捕らえてやろうかと思うが、リィナが悲しむといけないしな。こんな婆さんでもリィナは慕っているのだし。「俺は侯爵様に用事があってきた。婆さんに用はないぞ?」「ワシももう歳じゃからな? 若いイケメンと会話くらいさせてくれ」「まだまだ生きそうじゃねぇかよ……」 この婆さ







